完結編 「さらば東京、また来る日まで」の巻


 迷路のように入り組んで、どこにあるのか皆目見当もつかない「キラーカーンの店」を探す前に、一丁「度胸水」を入れとこうかということで、東口の屋台で一杯引っかける。
 ここはもう何年も前に、マダムと「ちょいと一杯引っかけよう」といって、四時間も長居してしまった思い出深い屋台だ。
 そこで、喉をしめらせたわれわれ2人は、ふたたび歌舞伎町の雑踏へ。
 するとそこには、いるわいるわ、客引きのお兄ちゃんの群れ。
定番の「社長、いいところありますよ。」から始まって、「お兄さんお兄さん、いい娘いますよ。」しまいにゃ、「兄貴、今夜一晩面倒みさせてください。」なんてのまで出てくる始末。
こんな弟見たことないわ。
 まさか、親父が東京いた頃に・・・・。
こうなりゃ最後の手段ってんで、前ちゃんと腕を組み「俺たち、コレだから・・。」といって、逃れたが、それも一瞬。
すかさず「ソッチのほうもご用意できます」には、ひっくり返った。
ホントに、人間の欲望を満たすものなら、なんでも取りそろえてる街なのね、新宿って。

 なんて事を思いながら、迷いに迷って、携帯を駆使し、やっと一時間後に目的の「カンちゃんの店」に到着。
そこは、ごく普通の居酒屋で、お目当てのキラー・カーンはお客さんと一緒にカラオケを歌いに行ったという。
 仕方がないんで前ちゃんとさしつさされつ、夜の彷徨で冷え切った体を、熱燗で温めつつ待つことにした。
そこでわれわれがつまみに注文したのは、北海道産の「イカの一夜干し」と「サンマ塩焼き」・・・・。
そったらもん、芦別帰ったら胃袋裏返るまで食えるべっつうの、あほか?
 めざすカンちゃんはいなかったが、そこで働いているシゲさんっていう人が、話し好きで全然退屈しない。
 やれ、アソコの坂からこっちは中国マフィアのシマだとか、ちょいともめ事があると連中はすぐ中華包丁でメッタ切りにするとか、ついこのあいだの発砲事件は、この近所だったとか・・・酔いの覚めてくるようなデンジャーな話題が満載だった。
 まさか、こうやって酔いを覚まさせて、飲む量を増やそうという戦略だろうか?


 シゲさんのいうには、カンちゃんは同じ階にも、カラオケスナックをやっているので、そっちの方で待っていてはどうかということになった。
 料金も「うちは、カンちゃんがああいう人だから、絶対変なことしない。」ってんで、1人四千円ぽっきり。
 前ちゃんと2人でカラオケってのもなんだけど、せっかく来たんだし、カンちゃんにも一目会いたいんでカラオケパブ「カンちゃん」へ行くことにした。
 お客さんとカラオケに行ったカンちゃんの留守を預かっていたのは、退院してきたばかりの由美さん(だと思ったけど)という女性。
年齢は我々よりちょっと若いぐらい?だが、しっとりしたいい感じの女性だった。

 そこへさっきのシゲさんがでかい花束を持って入ってきた「退院おめでとう」といって、由美さんに花束を渡す。
 なんでも近くに、ホストクラブがあって、そこのアンちゃんにプレゼントされた色々なモノが路上に捨てられてあるというのだ。
「このあいだなんか、カシミヤのコートまであったんだから」だと。
さすが「東京バビロン」欲望が渦巻きまくってますな。
今度来るときは、でっかい袋持ってこなきゃ。
 歳が近いせいか由美さんとも色々、話しが盛り上がり、もしなんだったらここで前ちゃんに帰ってもらって・・・・、なんてことは、思いませんでしたよ。ホント。

 そうこういってるうちに、キラーカーンが帰ってきた。
近くで見るとやっぱりでかいわあ。
 「北海道の芦別というと、若松くんは元気ですか?」と、訪ねられた。
乱入市会議員」若松は、一時期アメリカでカンちゃんのマネージャーをやっていたのだという。
そんなこんなで、話し込んだり歌ったりとても楽しい時間を過ごさせていただいた。

 そして帰り際に、酔いの覚めるひとこと。
「さっきそこの角でまた発砲事件があったので、気をつけて帰ってください」。
どういう風に気をつければいいんでしょうか?
最後の最後まで刺激的な街ですこと。
また酔い醒めちゃったわ。


 翌日、やはり「おのぼりさんの聖地 浅草」にも行くべきだということで、われわれは浅草に向かった。
そこで、なぜかおみやげに沖縄名物島らっきょうを買い、水上バスで空港に行こうとしたが、残念ながらちょいと時間が足りなかった。
 しかたないので、ウ○コビルの写真でも撮ろうと、カメラを向けると、そこにはハエのオブジェまでついている。
「ほほぉ、いつのまにか開き直って、ハエまでつけることにしたのか」と、ズームしてみると、なんと何かの作業中の職人さんたちでした。
ハエと間違ってすみましぇん・・・・でもあまりにぴったりの構図だったモンで。

いよっ!!おのぼりさんの女王 ほーら、ハエに見えるしょ でも作業中の職人さんでした

あっという間の四日間だったが、貧乏性ならではの中身の濃ーーーい旅でした。
前ちゃんをはじめ、たくさんの人のお世話になり、無事研修旅行も終了。

久々に帰ってきた芦別は、それはそれは風通しのいい街でした。
さらば東京また来る日まで、アディオス!!

いやはや、このレポートも今年中に終わってめでたしめでたし