3日目夜「夜の新宿裏通り」の巻


予定を次々とこなした我々は、最後の大仕事「研修番号1番 映画「タカダワタル的」の鑑賞、および差し入れおよび激励、(禁酒のススメを含む)」に取りかかるため、新宿のホテルに向かった。
その時代時代の欲望を余すところなく飲み込んで、それを栄養にしながら発酵し、成長し続ける町「新宿」
映画「タカダワタル的」は、ここ新宿の映画館「テアトル新宿」で、上映されている。

そのためにホテルをとったのだが、場所は歌舞伎町交番のすぐそば
ごった返した新宿の、もっともごった返したあたりだ。
その異様な雰囲気に飲まれたマダムは、すっかり毒気に当てられたらしく寝込んでしまった。
しからば拙者単独で夜の新宿を徘徊しようともおもったが、こうごった返していては、西も東も皆目見当もつかん。
しかしてまた、1日目に続き、前ちゃんにご案内していただくことと相成った。
まったく頼りになるお方ですこと。

電話でホテルの場所を告げると、「えらい濃い場所を選んだものだ。」といわれ、「そこ」まではいきたくないので、西口で待ち合わせようということになった。
まるで、N.Yのハーレムか南米の裏通りのような扱いではないか。
ま、下町巡りをしてきたものからすると、頭がくらくらするような街だけどね、ここは。



携帯電話のおかげで、しっかりと出会えた2人は、まんず、代々木にあるディランファンの店「マイバックページ」も覗くべえと、代々木へと向かったのであった。(向かったっちゅうてもたった一駅だけどね)。
始めていった「マイバックページ」は、代々木駅のすぐそばの地下にあった。
地下に降りていく階段も、店の中もロックや映画のポスターでいっぱいだ。
しかも、同世代らしくいちいちぐっとくるポスターばかり。

中にはいると四角いテーブルは、ディランのレコードジャケットのコピーが貼られているし、大型のスクリーンでは「ジョン・メイオール」のビデオが流れている。
いいね、いいね、以前のディランで飲んでいるような気になるわ。
右の写真は、階段を下りていく前ちゃんの後ろ姿。
都会に飲み込まれまいとするサラリーマンの悲哀が漂ってるねぇ。
いつもの様にだらだらと飲んでいたいのはやまやまなれど、そろそろ映画の時間も近づいてきた。
後ろ髪を引かれながら、また夜の新宿へと我々は向かったのであった。
さらば「マイバックページ」、また会おう。


さて、いよいよ目的の「テアトル新宿」にたどり着いた。
俳優の榎本明さんが企画したというドキュメンタリー「タカダワタル的」。
友部正人、カルメンマキ、中川イサトなど毎日豪華なゲストが上映後、ミニライブをやるという特典付きだ。
そして今日のゲストは、ディランでもおなじみ、ブルース界の無冠の帝王「シバ」
こりゃ、一粒で二度おいしいわ。

近くの酒屋で仕入れた麦焼酎を差し入れるために、受付で「北海道の伊藤ですが、シバさんに取り次いでもらえませんか?」というと、スタッフの人が飛んできて、「もうチケットは買われたんですか?」という。
もちろんチケットは買っていたのだが、どうやら渡さんの口利きで、招待扱いになっていたらしい。
とんでもない。
渡さんの初のドキュメンタリー映画、チケットぐらいはズバッと買わせていただきますよ、あたしゃ。

奥の方に作られた(と思う)四畳半の楽屋は、まるっきり映画のセットのようだった。
そこで、ギターをつま弾くシバ。
いやぁ、絵になるわ。
いよぉ、憎いよこの四畳半の貴公子!!
で、なんだかんだと雑談を交わしていたら突然、いい機嫌の渡さんが入ってきた。
「節酒」をすすめるどころか、すっかりいい調子だ。
「わざわざどうもどうも。」といいながら、制作のアルタミラ・ピクチャーズの人などをいろいろ紹介してくれた。
おっしゃ、北海道での上映会も、実現させようじゃあーりませんかとついつい調子に乗ってしまった。
ああだこうだと、おだをあげていたら突然シバが、「で、今日は何しに来たの?」という。
「いや、だから映画を観に来たっていってるじゃないすか。」というと、「もう半分以上終わってんじゃないの?」という。
がっちょーん!!
あわてて飛び出す我々の背中に、渡さんの追い打ちの一言が響いた。
「最初から観ないと、ラストの良さがわからないよなぁ。」
「そうそう、わからないなぁ。」とシバも相づちを打つ。
鬼!!


あわてて飛び込むと、半分とはいわないまでも、やはり映画はかなり進んでいた。
吉祥寺をぶらつく渡さんや、酔いつぶれる姿のほか、たくさんの演奏シーンも楽しい映画だった。
しかし、全体の時間が70分少々というは、ちょっと短い気がしたが、初めて見る人には入門編としてちょうどいい長さかもね。
そして、映画のあとのシバのライブが始まったのだが、これは短いなりにかなりすばらしい演奏だった。
特に新宿で聴く「酒」の「ネオンきらめく色町のあたりをぶらつけば〜」というあたりには、かなりぐっときましたよ。

で、また楽屋に戻って挨拶をし、我々は夜の新宿へとぶらつき出したのであった。
さあ、目指すはモンゴリアン・チョップでおなじみのキラー・カーンのお店
どういう運命がわれわれ中年2人組を待っていることやら。
そんな2人をおどかすかのように、新宿の夜には冷たいビル風がびゅうびゅうと吹き荒れていたのであった。


次回いよいよ待望の完結編
「さらば東京 またくる日まで」へ続く・・・・のか?