「夢の宝箱」

 白黒だったのに子供のころの、記憶の中のテレビは、今よりずっと輝いていた。
作り手の真剣な思いが、画面の向こうから熱く伝わってきた。
 テレビ、特にバラエティーとかいう番組をほとんど見なくなってもう何年にもなる。
仕事柄、深夜にテレビのスイッチを入れることが多いが、そこで繰り広げられている世界のあまりのひどさに、すぐスイッチを切ってしまう。
 そして、それは何も深夜だけに限らない。スタジオに呼んだゲストを取り巻いて、チャチャを入れるだけの「合いの手屋」が大物タレントといわれ、それにこびを売る若手芸人とやらが追従して、たいしておかしくもない場面で空騒ぎをする。
こんな身内の宴会のようなものを見せられてどうしろというのだろうか。
 しかもスタジオにいるスタッフの内輪うけの笑い声まで聞かされては、みている人間はますます白けるばかりだ。
 あれだけ競い合っていい番組を作っていたテレビ界がなぜこんなおかしな世界になってしまったのだろう? 
ただのノスタルジーでないことは、スカイパーフェクTVなどで当時の番組を見るとよくわかる。
予算も技術も限られた中で、テレビにしかできないことを命がけでやっていた。
 確かに今の番組にも優れているものはある。
しかし、玉石混交といっても、あまりにひどすぎる。
 今これを見て育った子供たちは大人になって振り返ったとき、テレビを「夢の宝箱」として思い出すのだろうか?