「目的と目標」

 二十四歳でこの店をオープンするまでいろいろな職を転々とした。
大工、居酒屋、家電配達、チリ紙交換、左官工…どれも長くて一年、短ければ半年ぐらいしか続かなかった。
金がある間は遊び歩き、なくなると働き口を探す毎日。
典型的ななまけ者だった。
 その後ひょんなことから店をオープンすることになったが、成り行きで始めたような店が繁盛するほど世の中甘くはない。
すぐに借金だらけになり、店を人にまかせ、本州に出稼ぎに出る羽目になった。
 このまま店をたたんだのでは、少ないながらも応援してくれている常連さんに顔向けができない。
こうなるとさすがのなまけ者も本気で考えざるを得なくなった。
 「仕事の目的は生活かもしれないが、目標がないからいつも続かなかったのだ。
何か夢中になれるものを見つけなくては」。
生まれて初めて真剣に考えた末の結論、それは音楽だった。
好きな音楽だったらだれにいわれなくても勉強をするし、苦しいこと、いやなことも我慢ができる。
 いつか自分の店に好きなミュージシャンを招き、応援してくれた人たちとライブを楽しむこと、それが目標になった。
かなり遠回りしたような気もするが、今までの仕事はいろいろな場面で役に立っている。
経験を無駄にするのもしないのも自分次第だ。
 どんな仕事も長続きしなかったなまけ者の始めたこの店も、今年で二十三年になる。