「渡さんは何組?」


 実際使っている人と会ったことはないが、「勝ち組」「負け組」というみっともない言葉を雑誌やテレビなどで時々見かけることがある。
どこのだれが判定してくれるのか知らないが、そんな大ざっぱにくくってもらわなくてもけっこうだ。
 そういうくくり方の好きな人たちにとって、フォークシンガーの高田渡さんなどは、一体「なに組」に入るのだろうか? 
 「自衛隊に入ろう」が、ヒットして、あやうく反戦フォークの旗手として祭り上げられそうになったときも、ひょいと身をかわして、いわゆるヒット路線から退いてしまった。
そのあとも、ただ音楽とだけまっすぐ向き合い、時代の流れにはいっさい迎合せず、今もギター一本で日本中を回っている。
 そんな渡さんだが、驚くほどいろいろなジャンルの人たちに人気がある。
今年四月に封切りになった、映画「タカダワタル的」も俳優の柄本明さんの発案でつくられた。
NHKなどでは何度も特集を組まれ、CMからも歌が流れ、トリビュート・アルバムまで発売されている。
 しかし、その渡さんが住んでいるのは、いまも電気の容量が十五A(アンペア)しかない東京・武蔵野の古いアパートだ。
お金があるのに、見栄やポーズでそんなところに住んでいるわけではない。
CMの出演料が入ったときなど、奥さんに「そんな一度に収入があったら、都営住宅に入居できなくなる。」と、しかられたそうだ。
 そんな渡さんを、柄本明さんは「とても大きな欲を持っている人。でも欲の持ち方がわれわれとは違う。」といっている。
 で、こういう人って、「勝ち組」?「負け組」?