第二部 「ほなさいならは愛の言葉」


夜になってもまったく温度も湿度も変わらない、残暑真っ最中の、大阪の町。
その暑さにくらくらしながらも、超酩酊状態のアズミに拉致された我々「てなもんや道産子隊」は、三台のタクシーに便乗して、夜の御堂筋をキタへ向かった。
我々が呑んでいた天王寺と比べると、街並みがどんどんモダンなっていく。
大阪のタジ・マハル有山淳司の歌にも「あこがれの北新地」なんて歌があるぐらいだから、東京でいえば銀座に近いイメージなのだろうか。
しかし、アズミのエスコートで銀座のような場所に行くことないだろう。
せいぜい「○○銀座商店街」なんてのがが我々にはお似合いだ。
そして、タクシーから降りたわれわれが連れて行かれたのは、「やっぱり」と思うような雑居ビルの地下。
その名も「バー アフターアワーズ」
以前のディランを思わせるたたずまいに、みんなご満悦の様子。
狭い店内に何人かいたお客さんは、大人数のわれわれに気を利かして(恐れをなして)、席を立っていった。
またしても、われわれの貸切になってしまった。

キタにて、五十一(左)、前ちゃん、アズミ
まるでエビスと毘沙門天にはさまれているようだ
そこへインディー(布袋)が加わると
三福神の完成
あとの4人は誰にしよ

そこでも、まるで自分の家のように大騒ぎしているわれわれを、マスターは優しく見守ってくれた。
そのご厚意にべったり甘え、前ちゃんなどは、カウンターで熟睡する始末。
道産子の品位が問われるねぇ。まったく。
一層酔いに拍車がかかりブッ壊れたアズミは大声で意味不明な奇声を発し、大騒ぎしたあと「じゃ、次の店で待っとるで!! ほな、さいなら!!」といって、いなくなってしまった。
おいおい、「次の店」って、一体どこやねん?
あとで聞いてみるとアズミは、ほんとに「次の店」でわれわれの来るのを待っていたらしい。
おーまえーは、あーほかー。
今でもアズミの「ほなさいなら」という言葉が、横山ホットブラザーズののこぎりの音と共に頭の中でこだましているような気がする。
誰も知らない「次の店」で待っているアズミはほっといて、ここで出してくれた「たこ焼き」の美味かったこと。
ミュージシャンのあいだでも、有名らしい。
食べ物にうるさいあの遠藤ミチロウさんも「あそこのたこ焼き美味いんだよね。」と、そのあと会ったときにほめちぎっていた。
ちなみにカレー味のピクルスもなまら美味かった。
うーむ、さすが食い倒れの街 大阪、あなどれん、あなどれん。
冷めても皮がぱりっとした「名物たこ焼き」と「カレーピクルス」をすっかり堪能したわれわれは、夜中の二時「まだゆっくりしてってください。」というマスターの社交辞令の声に送られやっと重たい腰を上げてホテルに戻った。

「アフターアワーズ」のマスター
たこ焼き、なまら美味かったわ。
おおきに。
あこがれの北新地で熟睡する前ちゃん
手前右は、他人が寝るとしっかりする「獏」の旦那

ホテルの前で力つきた前ちゃんは、大人しく部屋に戻っていったが、「獏」の旦那はまだ飲み足りないらしい。
仕方なく、ホテル近くのラーメン屋に入り、ラーメンとビールを注文。
ここでも「獏」の旦那は意地汚く日本酒に手を伸ばす。
しかし、飛び込みで入ったラーメン屋の日本酒は、目が覚めるほど不味かった。
またしても、ブッ壊れかけている旦那を、引きずるようにしてやっとの思いでホテルに戻る。
それにしても、長い一日であった。
明日は当初の目的であるスーパーサーカス「キダム」のステージ。
しかも念願の、ほかのメンバーと離れた単独行動。

明日は新世界でもいってみっか。

大阪どたばた珍道中 第三部 「新世界は○○の街」に続く・・・・か?